カーンの影
泳ぎ出た都市。
カーネイトが自らの戦士としての伝統に背を向けてから、もう長い年月が過ぎている。あそこにはもう海賊や自称遊牧民の居場所はない。そのような爪弾き者たちは、いまではこの影の中に住んでいる。難破し、座礁し、退役した百もの船に囲まれて。
続きを読む泳ぎ出た都市。
カーネイトが自らの戦士としての伝統に背を向けてから、もう長い年月が過ぎている。あそこにはもう海賊や自称遊牧民の居場所はない。そのような爪弾き者たちは、いまではこの影の中に住んでいる。難破し、座礁し、退役した百もの船に囲まれて。
続きを読むその甲羅は荒ぶる夢ほどに大きい?
いかなる大聖堂をもしのぐ巨大な亀の甲羅。そのぬるぬるする側面を、波がびちゃびちゃと洗っている。陰気な目をしたキュロネイト人たちが、甲羅の周りの腐った桟橋の上をぶらついている。あちこちにぶら下がるランプは、祭りの時期の肉屋の飾りつけのよう。あなたの周りでは、大昔の肉の屑切れが海いっぱいに広がっている。
続きを読むここが終わり。
大きく翼を広げた二体の像が門を守っていた。門の表面は松脂のように滑らかだが、しかし平坦ではない。それは深いギャントの色をしていたーー他のすべての色が食われた後も、なお残る色彩だ。門のバルブの隙間は氷で埋め尽くされていた。そこに近づくと、あなたの息は凍り付き、空中で破片となって音を立てて落ちていった。門に手を触れるのは、まったくの愚行であるように思われた。
冷酷な風があらゆる方向から吹き荒んでいた。風は、あなたのブリッジコートも肉体も杯も、すべてをたやすく貫いてゆく。波止場には誰もいない。
続きを読む塩の荒野の傍らの、寒々しい街。
湾にかかる巨大なアーチの向こうには、ペイル・ウェイストと呼ばれる荒れ地が広がっている。月面のような白さと静けさ。船から見渡すと。そのすべてが雪であるかのように錯覚しそうだ。町の北では、思いがけない色をした塩水溜まりが盛んに泡立っている。
続きを読むプリムストーン。尽きせぬ硫黄
陰気な灯火が、突堤の端で緑の光を投げかける。港の街並みの背後では、島がひざまで灰に埋もれている。あちこちに、火事で焼け落ちた家屋の残骸が点在している。遥か上方、山頂のあたりで、一瞬、赤い光が閃いた。
続きを読む音楽が聞こえるかい?
人目をはばかる様子の信者たちが、無数のろうそくの間に集まっている。チャペルの塔で鐘が鳴る。鉄のかすれた笑い声。用心せよ。この島は声で満ちている。
続きを読む