大晶洞
蜃気楼のような、遠くからの歌声。
ここは海軍基地なのだが、王立海軍の記章には興味深い修正が加えられていた。どこを見渡しても、有能そうな輝く瞳の男女が熱心に働いている。彼らは耳慣れない言葉からなる讃歌を歌っていた。厳しい表情をした王立海兵隊が、晶洞の中心部への道を守りながら、あなたのことを注視している。
ドックのそばの、銘板は橙色の絵の具で塗り潰されていた。しかしそれでも、あなたの元の碑銘を読み取ることができた。「第五基地(支所)」と、銘にはそう刻まれていた。
続きを読む蜃気楼のような、遠くからの歌声。
ここは海軍基地なのだが、王立海軍の記章には興味深い修正が加えられていた。どこを見渡しても、有能そうな輝く瞳の男女が熱心に働いている。彼らは耳慣れない言葉からなる讃歌を歌っていた。厳しい表情をした王立海兵隊が、晶洞の中心部への道を守りながら、あなたのことを注視している。
ドックのそばの、銘板は橙色の絵の具で塗り潰されていた。しかしそれでも、あなたの元の碑銘を読み取ることができた。「第五基地(支所)」と、銘にはそう刻まれていた。
続きを読む出処の分からない銀の輝き。ゲームの競技者たちの安息の地。
細かく複雑な凹凸模様のある珊瑚が海中と水面の上に広がり、銀白に煌めいている。長く見つめていると、まるで珊瑚全体が誰かの手による彫刻であるかのようにその混沌の中に様々な形が見えてくる気がする。この部分は城壁に囲まれた城であれは馬の頭だろうか。
珊瑚礁からなる島の側面に寄り添うようにして、小さいながらもきちんとした港が作られていた。何の変哲もない英国式の港が有機的で華美な混沌の中に包み込まれている。その光景は不可思議な銀白の光に筒まれ、珊瑚礁の形作る凍り付いた混沌の中で、丸められ捨てられた鉛筆画のような非現実的な空気を纏っていた。
続きを読むローキンズ港。その名はドラウニーの中でも最も冒険好きだった者に因んでいる。フォスフォロスの小部屋が緑に燃える。この下のどこかで、王が待っている。
アイスバーグがそうであるように、バザールの支配者の計略がそうであるように、Neath自身がそうであるように、この砦もまた、大部分は隠されている。見て取れるのは、彫刻を施されたサンゴのごく一部だけで、残りはすべて水底にある。ファザムキングの骨の間も、養魚槽も、真珠の罠も、正餐質も......
続きを読むフォールン・ロンドンで死ぬものはほとんどいない。代わりに、ここへやってくる。
甲板に立つと、千を越す包帯巻きの死者達が咳き込み、足を引きずって歩く音が聞こえてくる。それはまるで、世界で最も落ち着きのないコンサートの聴衆か、世界で最も疫病の蔓延する大聖堂のようだ。
続きを読む静かな島、古く壮大な館。
海から突き出た暗い岩山が霧に包まれるさまは、Underzeeの凡百の島々と何ら変わるところがない。しかし、この島には壮大な屋敷が建っており、窓は明かりに煌々と輝いている。芝生の緑のしさは偽星の光の下にあってはありえないほど。砂利道もきちんと掃き清められている。
海が船べりを撫でるかたわら、あなたは桟橋に降り立った。意外なほど暖かいそよ風が、ほのかなラベンダーの香りを運んでくる。
続きを読む地獄の従属国である。用心せよ。この地の法は、人の手による法律とも、自然法則とも異なっている。
工場のエンジンが偽りの獅子のごとく吠え猛る。船着場のパイプの中を血液が音を立てて流れる。深紅の稲妻が甲板を越えて船べりに飛び込み、そこで猫のように丸くなった。港のガラスのように静かな水面には街が写り込んでいる。鏡像の街の町民たちは犬や蛇の頭を持っていた。
地獄がアイアン・リパブリックに自由をもたらしたのだ。あらゆる法からの自由であるそれは自然法則さえも例外ではない。
続きを読む注意して歩くように。
「嘆き」は岩山ほどの大きさの石筒であり、その足元に港は存在しなし。私掠船団の砦の半分くらいの高さに作られているのだ。複雑な巻き上げ機の機構から伸びた網がピンと張りつめ.....あなたの船はゆっくりと海面から持ち上げられた。船体が抗議するように軋む。白髪交じりの船乗りが呻き声を上げて柱にしがみついた。
高く、さらに高く、船は上昇を続ける。いまやUnderzeeは眼下にで硝子の様に輝いている。
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